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第63回図画作文コンクール 審査総評

第63回図画作文コンクール 審査総評

 

福井県下小学校児童および中学校生徒を対象とした
第63回福井県小学校図画作文コンクール



 

図画審査総評

 
審査の様子

 63回目を迎えた伝統ある本コンクールに、県内の学校から、選りすぐられた作品2,000点を超える出品がありました。参加された児童・生徒の皆さんや、指導された先生方の熱心な取組みに、心から感謝いたします。
 審査会では、作品から伝わってくる子どもたちの声を聞きながら、一点一点慎重に審査いたしました。金賞受賞作品を中心に、審査員の講評を取りまとめ、総評を述べます。

 低学年では、子どもらしい素直な感動が、そのまま画面に表れたような作品が多く、明朗なクレヨンの線や鮮やかな色彩が相まって、こちらまでわくわくさせられるようでした。

1年生の作品は、広がってどんどん降ってくる雪のリズム感、人物の楽しげな表情のほほえましさ、オレンジのヘリコプターなど美しい色の配置と効果的な余白など、低学年らしい良さが十分に発揮された作品です。青い絵の具のスタンピングと、生き生きしたクレヨンでの描写がとてもマッチしていて、子供の描きたい気持ちが十分に引き出され、気持ちのこもった作品になりました。

2年生の作品は、虫が闘っている様子が描かれています。本を読んで想像した絵なのでしょうが、実際に作者が虫を捕ったり、虫と遊んだりした経験をもとに描かれた絵ではないかと思います。大きな虫を中央に黒のクレヨンで描き、背景を黄色や青で力強く表現されていて、その激しさや臨場感が伝わってくるようです。

 中学年では、計画的に構図を考えたり、思いに合わせて色や表現技法を工夫したりしている作品が多くありました。

3年生の作品は、プールの大会できんちょうしながらもがんばったことが伝わってきます。ベストタイムは出たでしょうか。みんなあと少しでゴール、「がんばれ!」と応援したくなりますね。目に鮮やかなコースロープとスイスイ泳ぐ選手の姿がとてもすてきです。
4年生の作品は、電車に乗って宇宙に来た子ども達の歓声が、聞こえてきそうです。クレヨンや絵の具の特性を生かして、光り輝く宇宙の様子が見事に表現されています。また、黄色とピンクの光の帯が画面に動きを与え、電車のスピードを感じさせます。楽しく描いている姿が目に浮かぶ秀逸な作品です。

高学年になると、写実的に描写する力が伸び、奥行きや影までも表現しようと、構図や色の組合せを工夫している作品が多くありました。

5年生の作品は、にぎやかに咲き誇るアジサイが、強い存在感を放っています。一輪一輪、丁寧に色がつくられていてとてもきれいです。それに対して、周りの建物などが控えめな色味で表現されていることで、街並みの静かで趣深い雰囲気を演出しつつ、アジサイを見事に引き立てています。
6年生の作品は、中央の人物が、抽象的かつ神秘的に表されており、こちらへ何かを訴えかけているようです。理想郷は、その額縁の中に入ればあるのでしょうか。それとも、やはり絵空事としてしか存在しないのでしょうか。それとも…。自分が想像した場面を、細密な描写やコラージュを用いて表現することで、世界観に説得力をもたせています。

中学生になると、明確な主題をもち、表し方を深く考え、工夫して描いている作品が多くありました。心の内面や空気感までも表現しようとしている作品もあり、表現力の高さを感じます。

1年生の作品は、明るく照らされた川をゴンドラのような船に乗って進む情景です。森の奥では、お祭りでも行われているのか、とても楽しい雰囲気が漂っており、にぎやかな音楽まで聞こえてくるようです。細いタッチで、心を込めながら、作品全体の温かなイメージが編み込まれています。
2年生の作品です。生命の輝きがあふれる海中の世界と無機質なビル街が、雨の日の水たまりを通じてつながっています。すべての生き物がいきいきと、細部まで描かれており、美しく幻想的な世界に引き込まれます。
3年生の作品です。人物は肌の陰影や制服の質感等、とても丁寧に描かれています。一方背景はグレー主体の色彩が大胆に渦を巻き、人物の抑えられた感情が表出しているかのようです。タイトルにある「腐れ縁」が正にも負にも働いているのかもしれません。

図画工作・美術教育では、子どもたち自らが表したいことを見付け、その思いに合わせて工夫して表現することを大切にしています。入賞した作品からは、どれも子どもの表したい思いと工夫した表し方を見取ることができました。子どもたちは、絵を描くという行為を通して、多くの力を身に付けています。発想や構想をする力、想像する力、考える力、試行錯誤する力、工夫して表現する力、失敗を乗り越える力など、たくさんあります。これらは、これからの予測困難な時代を生きていく子どもたちにとって必要不可欠な力ばかりです。
子どもたちが思いをもって表現した絵は、子ども自身そのものです。保護者の皆様、お子さんの絵について、どんな思いで描いたのか、絵のお話をぜひ聞いてあげてください。その話に共感するだけで、お子さんのことを大切に受け止めているメッセージになります。そして、自分の感じ方や表現を大切にされた経験が、自分とは違う他者の感じ方や表現を同じように大切だと感じられる心の育成につながっていくでしょう。
最後になりましたが、子どもたちの生き生きとした造形活動を温かく見守っていただいている御家族の方々、そして長年にわたって福井県の図画工作・美術教育の向上に御尽力くださっている関係者の方々に、心より御礼申し上げ、総評といたします。

 

【文責】福井県教育庁義務教育課 指導主事 小泉 智

作文審査総評

 
審査の様子

はじめに

第六十三回福井県小中学校図画作文コンクール「作文の部」には、五百二十四点の応募がありました。みなさんの作品を審査員の先生方とともに読ませていただき、金・銀・銅と佳作の各賞を決定しました。審査に当たり、どのような点を評価したのかを講評します。

一 小学校の作品について(今年度は三・四・六年生)
小学校の応募作品は、身近な生活体験から発見したこと、学んだことを自分の言葉で率直に表現している作品が多くありました。また、生活科や総合的な学習の時間に学んでわかったことや考えたことをまとめた作文、非日常的な体験を丁寧に振り返った作文等、多様なテーマ・内容の作品も見られました。どの作品も自分の思いが素直に綴られており、特に入選作品は、読み手に筆者の思いがストレートに伝わり、その瑞々しい感性に感心しました。
小学校三年生の金賞作品は、「パパのおたん生会」です。お父さんの誕生日は、七海ほさんにとって特別に大切な日で、お父さんから目が離せなかったのでしょう。朝起きた瞬間からのお父さんの様子やお父さんをお祝いする出来事が、素直な言葉でつぶさに、会話文を効果的に用いながら綴られていました。お父さんと七海ほさん、そしてご家族のあたたかな関係が伝わってきて、読んでいるこちらも幸せな気持ちになる作品でした。
小学校四年生の金賞作品は、練習から一位を目指してがんばる閏政さんのマラソン大会に向けての並々ならぬ思いが伝わってきました。走っている途中、後ろから聞こえてくる足音、応援の声、視界に入ったもの描写など、臨場感が感じられ、読み手まで一緒に走っているような感覚になりました。ライバルりん太ろうさんとのお互いをリスペクトする関係性もすてきで、ストーリー性を感じました。
小学校六年生の金賞作品は、ピストルの音とともに始まるこの作文は、レース途中の描写だけでなく、その文章構成力の高さや高学年になってなかなか結果が出せない葛藤をある意味冷静にとらえて心の声として綴っていく巧みさが光る作品でした。六年間の陸上を通して人間的にも成長した理愛さんの力強さや前向きさが表れた締めくくりも印象的で素晴らしかったです。

二 中学校の作品について
 中学校の応募作品は、日頃の学校生活を通して気づいたり考えたりしたこと、中でも、部活動や学校行事を題材とした作品が多く見られました。そのほか、家族や友達への思い、社会情勢や社会問題について等、幅広く題材を求め、自らの感動体験を経て学び取ったことが正直に綴られ、書き手の心の成長の跡がうかがえました。特に、人間関係の大切さを認識しながらも、あれこれ考え、悩んでいる中学生の率直な言葉は切実なもので、書くことによってものの見方や考え方を広げたり深めたりしている様子が見て取れました。
中学校一年生の金賞作品は、令和六年元日夕方の突然の揺れ。初めて経験する大きな長い揺れの怖さと、つりに出かけている父と兄を心配する本人の心情が、母親の行動や東日本大震災の記憶とともに時系列に沿って語られます。
揺れが収まり余震が続く中次々と明らかになる被災状況を目の当たりにし、被災者の方々を慮る偽りのない素直な感情と自分がすべきことがさらに綴られます。
まことしやかな受け売りの自己変容を語るのではなく、今回の地震の経験を通して東日本大震災から続く災害の伝承を引き受ける一人としての決意が語られるくだりは、好感がもてます。
中学校二年生の金賞作品は、陸上部員である筆者の葛藤と挑戦が、歯切れのよい文体で綴られました。不慮の骨折から半年。時系列でまとめられた構成はシンプルですが、そこにちりばめられた心象風景の描写が秀逸で、筆者の絶望や不安、そして一筋の希望が生まれる様がストレートに伝わってきました。逆境と向き合い、力強く成長した自分を飾ることなく表現した本作品は、読む者に勇気を与えます。
中学校三年生の金賞作品は、「私が興味をひかれていること」として「目線」と「言葉」を挙げ、それらを作者ならではの視点で深く掘り下げて書いているところが魅力的です。それぞれ違う人生を歩んでいるのだから人間の数だけ「目線」は存在すると考え、「角度の違う目線を手に入れることができるから本が好きだ」という作者。さらに、自分とは違う目線を理解することで、置かれた状況を違う感情でとらえることが可能だろうと綴っています。
他者との関わりを通して新たな見方・考え方に出会った時の心の底から湧き上がってくるわくわくした気持ちが、自分の内面を客観視しながら細やかな描写で率直に表現されています。日常の事柄について独特の視点で分析したことは、書くことによって整理され、作者のこれからの人生をますます鮮やかに彩っていくと思います。

三 作文を書く上で気をつけてほしいこと(作文審査を通して)

 題材選びで大切なことは、自分が一番書きたい内容は何かを明らかにすることです。自分だけが経験した特別なことであったり、共感できる体験であったり、あるいは、今社会で問題になっていることであるかもしれません。また、自分がこの経験を通して変化したと感じたことなど題材選びはとても重要です。めったにできない珍しい体験や、自分が本当に心打たれた体験は、読者をひきつけます。その題材で何を伝えたいのかという、自分なりのテーマをもって書くようにしましょう。
 「伝えたいこと」が決まったら、どのような構成で文章を書くのかを決めます。伝えたいことの中心内容を明確にするために、伝えようとしている内容の中から、中心に述べたいことを一つに絞ることが大切です。どのような内容をどのくらいの分量で、どの順で書いていくのか構成を考えましょう。
 文章の種類によって構成も変わってきます。論説文と生活文とでは文章を書く目的も変わるため、それらにあった構成をしなければなりません。国語の授業で学んだ「はじめ・なか・おわり」「序論・本論・結論」をうまく活用し、ただ文を並べるだけでなく、説得力のある根拠を用い、作品を構成しまとめてください。
 また、描写が詳しく書かれている作品は、読みながらその時の様子を具体的に想像することができます。また、描き手の人間性がものの見方や文章表現に表れてきます。今まで学習したさまざまな文章表現の工夫を、どう効果的に使うことでどのように伝わるのかなど考えながら、書いてみましょう。
 これからいろんな文学作品を読み、良い表現に触れ、表現していく上で生かしていってほしいと思います。
 最後に、表記について気をつけてほしいことを挙げます。

一 縦書きなので、算用数字ではなく、漢数字を使用すること
二 正しい接続詞・接続助詞や書き言葉、和語・漢語を効果的に使用すること
   (「なので」 「けど」 「じゃ」などは使用しない。)
三 正しい原稿用紙の使い方をすること
   (読点・句点をつける場所、会話文の書き方に気をつける。)
四 主語と述語を対応させる
五 常体、あるいは敬体で、文体を統一すること
六 表現技法を用いること
   ・比喩表現を用いる際、適切に用いているかどうかを吟味する
七 会話等を効果的に引用すること
八 象徴する「言葉」や「物」「色」などを作品の中に入れるなどの工夫をする
九 同じことの繰り返しをさけ、文章をすっきりとさせる

 作文を書く際には、国語辞典、類語辞典、国語便覧等を手元に置き、自分の思いに合う言葉を見つけて、どんどん使ってみましょう。

四 おわりに

 今回、誰がその文章を読むのかを考え、読者と対話する気持ちを、文章の調子を変化させて、読者を飽きさせないように書かれた文章、またここから先は、あなたの自由にどうぞという余地を残した作文も多く見られました。読んでいて楽しかったです。
文章を書くことは大変ですが、楽しいことでもあります。また、苦労もありますが、成果を得ることもできます。自分の経験や考えなどを文章にしたものを見ると、苦労した分達成感も生まれるはずです。自分の考えが一つの体系にまとめられていくのを体験するのも楽しいはずです。原稿用紙に向き合い、作文を書くということは、自分の心と向き合う貴重な体験となります。相手が自分の文章を読んで、どのような気持ちになるのかを想像しながら文章を書くことは、自分自身の考えや行為を順序立てて整理する力や、相手に自分の考えや気持ちを上手く伝える力を育てるものになります。
 「話題設定」「構成」「記述」「推敲」の各過程を年間を通じて丁寧に学習する場を設定し、子供たちが自分の伝えたいことをうまく書き表すことができた達成感を味わうことができるよう、ご指導、ご支援くださいますようお願い申し上げます。
最後に、本コンクールが子どもたちにとりまして、表現活動の貴重な機会とさせていただいていますことに対しまして、厚く御礼申し上げます。

 

【文責】福井県義務教育課 指導主事 斉藤昌代