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佐藤直紀×田中良幸 インタビュー
佐藤直紀×田中良幸 インタビュー

映画やドラマの音楽の世界で、トップランナーとして走り続けている作曲家の佐藤直紀に、田中良幸が直撃インタビュー
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映画やドラマの音楽、呼び方は「サウンド・トラック」あるいは「劇伴」とさまざまあるが
若くしてその世界に飛び込みいまもトップランナーとして走り続けているのが作曲家の佐藤直紀だ。

映画《ALWAYS 三丁目の夕日》・大河ドラマ《龍馬伝》アニメ《プリキュア》シリーズと音楽で多くの人の心を鷲づかみにしてきた。

「音楽は演出の一部」と言い切り、 映像に寄り添う音楽を紡ぐために一日の大半を作曲の作業に費やすという生活を送りながら、
一方では、手掛けた音楽を「使い捨ての音楽」とも語る・・・。

(取材・文 田中良幸)

佐藤直紀インタビュー

田中 学生の時から、劇伴専門で行こうと思っていたのですか?

佐藤 思ってないです。商業音楽は何でもやってみたかったです。
歌もやりたいと思っていましたし、いわゆるJ-POPとか書きたかったですし、ドラマもやりたかったんです。
もちろん、CMの音楽も、それにアレンジャーの仕事もですね。

田中 もう、中学・高校あたりから作曲家になりたいと思っていた?

佐藤 作曲家になりたいと思ったのは中学の時ですかね。
まあ、音楽大学を目指す人間としては早くはないですね。

田中 誰かの音楽、誰かの存在、中学・高校時代に影響を受けたものはありますか?

佐藤 誰か一人に影響を受けることはなくて、広く浅くですね。
このアーティストのこの曲というのはありましたが、一人のアーティストや作曲家を深く掘り下げることはしなかったですね。

田中 佐藤さんが商業音楽を書いていく中で、自分にとってのエポックメイキングになった曲、音楽、「これ行けたな」と感じた曲はありますか?

佐藤 「これ行けたな」といった曲はないですねえ。
自分で自分の曲を良くできたなんて思ったことはないんですよ、一曲も。だからCDになって、自分の曲を聴き直すなんてほぼないですね。
(曲が)できあがった瞬間はもちろん、いいものができたと思います。
でも、録音が終わった瞬間からもう、「こうすれば良かった、ああすれば良かった」と反省するところが見つかります。
僕たちの音楽は映像につける音楽なので、この映像に対して別のアプローチがあったのではないかと。
だから、今回はいい曲が書けたなどと、思ったことはないですね。
そこで満足しちゃっていいのかな、というのか。僕は満足なんかできる曲、一生書けないですね。

田中 そうですか!
佐藤 さんにはメロディーがすらすらと浮かんでくる人というイメージがありました。

佐藤 いえいえ。苦労といえば、どの曲も苦労して書いています。
毎回、曲が書けなくて、今度こそ本当に曲が書けないんじゃないかと思って書いています。すらすら書けた曲なんて1曲もないですね。
僕はいま48なので、映像の音楽を始めて22、3年になりますが、いまだに分からないことだらけです。
もっといい方法、映像に対してもっと効果の出る音楽が絶対あるはずで、もっといろんなことがわかってもいいと思うのですが、何も分からないですね。
あと10年ほどすると、仕事も減っていくんでしょうけど、そうすると結局、映画音楽ってこうだよね、ドラマ音楽ってこうだよね、 映像音楽ってこうだよねってことが何ひとつ分からないまま作曲家人生を終えてしまうんだなって、ここ数年思っています。

佐藤直紀インタビュー

田中 私はクラシック音楽の仕事を長くやってきましたが、音楽が人の琴線に触れる、人々に感動を呼び起こすという点では、映像の音楽の存在は大きいと思います。
音楽が人々の心を振るわせた頭数は、クラシック音楽よりも多いでしょう。その時の感動は多くの人の心に、思い出に残っていくと思います。

佐藤 それはそうかもしれないですね。
映像と合わさるという音楽の強さが勝ちますよね。映像音楽は音楽だけの評価じゃないですから。
音楽が付いたことで、映像が動き出す。視聴者に届く。いい映像といい音楽が合わさった効果は足し算では決してないですね。掛け算になるんですね。
また、番組として素晴らしいと、音楽も良く聞こえてしまうところがあります。

田中 作曲のペースは今、どのくらいですか?

佐藤 30代の中頃は、とにかく仕事は全部受けていたので、年に12本とか13本とか書いていたんですが、器用なのでそれを全部こなしちゃうんですよね。
でも、それは良くないな、と思って、もっと一本一本にちゃんと情熱を傾けて音楽を書きたいと思ったので、なるべく仕事は減らすようにしています。
だいぶ減らしてきて、最近は年7、8本ですかね。2か月に1本よりは多いペースですね。

田中 製作はチームですから、長い付き合いがあったり、感性が合う人は、佐藤さんのところに頼みにくるでしょ?

佐藤 そうするとそれはお断りできないし、僕も断りたくないです。
なので、やっぱり7、8本やんなきゃいけなくはなってしまうんですけれども。

田中 そういう仲間から、突発的にくる仕事はないんですか?
ジョン・ウィリアムズも、もジェリー・ゴールドスミスも、インタビューした時に代役を頼まれて慌てて作ったことがあると話していました。
急いで作ったものも、長い時間かけて作ったものも、世間の評価は変わらないと言ってました。
まあ、時間があれば、いい音楽が作れるわけではないということなのでしょうが…。

佐藤 きょう録音したのも、3ヶ月くらい前に突然やるからと言われて。
頼まれた時にはもうスケジュールが埋まっていたんですが、僕が10年ほど前からずっと担当させて頂いている作品の続編なのでどうにかスケジュールを空けました。

田中 いま、一日何時間くらい作曲の仕事に時間を使っていますか?

佐藤 基本的には朝起きてから寝るまでずっと仕事しています。
1日14、15時間は仕事をしている見当ですかね(笑)。

田中 やはり、凄い作業量ですね。サウンド・トラックというと、我々、聞き手はどうしてもメインテーマばかり聞くことになりますが、それ以外の曲も多いですからね。
一つの番組のために何曲も書くわけです。一年続く大河ドラマなどは凄い曲数になりますよね。
「篤姫」、「江」の音楽を書いた吉俣亮さんに以前やっていた違うラジオ番組に出演してもらったことがあるのですが、その時は100曲以上書いたと。
佐藤さんは「龍馬伝」の時、どのくらいの曲を書きました?

佐藤 そうですね、90くらいですかね。
もちろん、もっと書こうと思えば書けるんです。
でも、いわゆる、どうでも良い「捨て曲」のようなものは作りたくないんです。
だから、あの時はどれも頑張って、それぞれ狙いを持って書きました。
ただ、ストライク・ゾーンは全部外したつもり、なんですけど(笑)。
もちろん、ストライクじゃない変化球ですべて勝負するというのはしんどかったですが…。

田中 作曲家さんのキャリアを追っていくと、まずNHKの朝の連続テレビ小説の音楽を担当し、それがステップになって、次に大河ドラマの音楽を担当する、というパターンが多いように思います。
大河ドラマの音楽は、作曲家のそれぞれの作風が浮き出ていて、歴代の音楽をずらりと並べると作曲家たちの“個展”を眺めているような趣があります。
それを手掛けるということは、自分の中で一つの節目みたいなことはあるんですか。

佐藤 そういう感覚は、僕にはないです。
言うのは難しいんですけれど、大河ドラマがドラマ音楽を書く上での目標でもないですし、 大河ドラマはもちろん素晴らしい作品には間違いないんですけど、そこが頂点ではないですね。
だから大河ドラマを目標にやってきたわけでもないですし、大河ドラマだから特別、力が入ったかというと、そうではないですね。
実際、大河ドラマの話をいただいた時には、僕がやるべきかどうか凄く悩みました。

田中 それは意外です。

佐藤 いろんな作曲家さんが素晴らしい曲を書いているんだけれども、やっぱり大河ドラマ的音楽っていうようなスタイルがあって、大河ドラマのための大河ドラマ的音楽という印象がありました。
なので、それを僕がやる意味があるのかって思ったんです。「龍馬伝」の話を頂いたのは40歳くらいの時でしたが、敢えて僕が大河ドラマの作風に乗っかるというのは、どうだろうかと。
素晴らしい作曲家がたくさんいる中で、あそこが勝負する土俵?、というのもあったんですね。

田中 でも、引き受けた?

佐藤 すごく迷ったんですが、「龍馬伝」の監督が「ハゲタカ」というドラマをやった大友さん(大友啓史)になって。
大友さんから「これまでの大河ドラマを崩したいんだ、映像的にも、音楽的にも。だからやってほしい」と言われたからですね。
製作に関わったみんなにそういう想いがあり、そこに僕も加わることができるのなら、と。
新しいものを作ろうという気持ちで作った作品なので、結果はどうかわかりませんが、凄くやった意味があったと思っています。
ただ、それでも、大河ドラマは僕にとっての頂点でもないし、目標でもないです。

田中 普段、具体的にどうやって作曲をしているのですか?

佐藤 曲にもよるんですが、頭で(考えて)書く場合もあるし、 サウンドデザイン的、音色優先の時は、シンセサイザーをいじりながら作ったりすることもあるし、 どんな曲を書くかによって、作曲の手法も変わります。

田中 佐藤さんはすぐメロディーが浮かんでくるような印象があります。

佐藤 いや、本当に曲が書けない(笑)

佐藤直紀インタビュー

田中 曲を書くために、なんて言うんでしょう、自分なりに何か課していることはありますか。
いわゆる「ローテーション」のようなもの、あるいは、験を担ぐとは言いませんが、こういう規則性を持たせて、えい!やぁ!で書き始めるとか(笑)。

佐藤 いや、ない、ないですね。
ひたすら鍵盤の前に座って、机の前に座り、鍵盤と五線紙、それに台本だったり映像があるので、それとにらめっこして、という感じです。
まあ、この映画の言いたいことは何なのか、このシーンで何を、どういった感情をあぶり出したいのか、そういうことを考えて曲を書いていますね。

田中 その意味では「映像に寄り添う」仕事ですが、結婚したり、お子さんができたり、引っ越したりと、 環境が変わると、映像から受け取るもの、ひいては自分の中から出てくる音楽も変わってきますか?

佐藤 音楽には人格なんか出ないと思っているので、よくいい人間がいい曲書くよとか、優しい人間は優しい曲を書くよとか、そうは思わないですね。
悪い奴でもいい曲書きますし(笑)。幻想音楽を書いているわけではないので、商業音楽、職業音楽なので、カメレオンのように嘘ついていろんな曲書けますよね。
だから、僕の音楽性が変わるということはないですよね。環境が変わったからといって。

田中 そうそう、これに音楽を付けるのは無理だろう、みないなことはないんですか?(笑)

佐藤 それはないですね(笑)。
まあ、付けづらいということでは、自分としては「ここ音楽鳴らないな」って思うところに音楽を付ける時ですかね。
打ち合わせの時に「このシーンからこのシーンまで音楽を入れてくれ。 何分何秒から」と言われるのですが、私なりに音楽が掛かる場所と掛からない場所ということを感じることはやっぱりあるんです。
監督によっては、独特なイン・アウトを指示する人もいます。そういう時は悩んだりもしますが、何か正解があるはずです。

田中 それはちゃんと監督に断るわけですか?

佐藤 監督が欲しいと言ったら書きます。
映像音楽の場合、音楽も演出の一部ですから。
書いておけば、使わないという選択ができますから。
ただ、これは映像にとって効果的じゃないから、なるべく使わないで欲しいと伝えて渡します。その時に音楽要らないですよ、という話はまたします。

田中 ジョン・ウィリアムズが昨年、自分が音楽を付けた映画は、完成後は見ないと言って話題を集めましたが、佐藤さんはどうです?

佐藤 僕は絶対に観ます。
観ないと、何も勉強にならないので。
僕の音がどう使われているか、どういう音響で鳴っているか、観るたびに反省点が絶対あるわけで。
そして観て落ち込みます。やっぱり、いろいろ見直すと、もっとああしたらどうだったんだろうとか、こういうアプローチはどうだったかなとか、思うところは色々あるんですよね。
うまくいったという気持ちよりも、もっと何か、もっと効果的な方法はなかったのかとか、という思いの方がはるかに強いですね。

田中 音楽が完成して映像と合わせた結果、思っていたのと違うということはありますか?

佐藤 映画にしろ、ドラマにしろ、作品が完成するのは、曲を書き終わってから何ヶ月後です。
その時、僕が想定してなかったこと、自分の考えとはちょっと違った結果になっていることはあります。
例えば、効果音との絡みとか、音量の問題です。台詞に合わせて音楽の音量は変わる。
あっ、ここで音楽をこう下げるんだとか、ここのセリフはなくなるのかとか。そんな時、そうなるだったらこうしておけば良かったな、とか思います。
もちろん、ああすれば良かった、こうすれば良かったとか、答えが見つかればいいんですけれども、答えが見つからないこともあるわけで…。難しいですね。

田中 これだけたくさん作品があるのだから、それらをコンサートで披露するようなことは考えませんか?
久石譲さんはじめ、同世代の作曲家さんの中にも、自作のコンサートを手掛ける人も増えています。

佐藤 私はやる気はないですね。というのも、サウンドとして、CDに入っているものがその曲のベストの音なんです。
それをコンサートで聴かせられるかというと、それは難しいんですよね。
もちろん、お客さんの中には、知っているメロディーを生で聴いたという感動はあるのかもしれないのですが…。
僕たちの音楽って、シンセサイザーや何やら色々な音が入っていて、いわゆる生の音でバーンと出す音ではないんですよね。
ここで何デシベル下げる、ここからリバーブをちょっと増やしていくとか、凄く細かいことをやって音作りを行っているので、それが生のコンサートでは再現できないんですよ。
絶対にCD以上のサウンドにはならないんです。
それともう一つ、コンサートに時間を割くんだったら、僕が今もらっている仕事に時間を割きたいという思いもあります。
僕はコンサートをやるアーティストじゃない。
ドラマや映画の音楽を書く作曲家。
なので、そんな時間があったらそのドラマのために、一日でも二日でも多く時間を使う方が、映像の音楽を作る人間としては王道だろうと、本筋だろうと。
指揮したり、コンサートのリアレンジやリハーサルやってる余裕があるんだったら曲を書きたい。
曲を書くのはつらいので書きたくないんだけれども、時間を使うのならそこだろうと。

田中 作品がたくさんあると、その音楽がその後、他の番組などのBGMに使われることも多いですよね。
作り手としてはどうなんでしょう?

佐藤 今は何とも。「無」ですね。嬉しいわけでも、もちろん嫌なわけでもないですね。
曲を書き始めた最初の頃、自分の曲がテレビで流れるというのは嬉しかったんですが、二十何年やってくると、おっしゃる通り、本当によく色々なところで流れるんですよ(笑)。
「プリキュア」なんて、本当にしょっちゅう流れてます。
その曲がどこで流れてようが、僕の感情は動かないし、また使われているなあ、とも思わなくなりましたね。

田中 この番組「田中編集長のサントラ大作戦」を始めたきっかけは、 いいにしろ悪いにしろ、日本は戦後のテレビ文化にどっぷり浸かっているのに、テレビで流れた音楽が全然評価されていないのはおかしいと思ったことがきっかけです。
テレビの音楽はどんどん消費されていく音楽、それが解っていてもです。
佐藤さんにしても次々に作っていくけれど、作ったものはどんどん消えていく。その世界に身を置くことをどう感じていますか?

佐藤 でも、そういう仕事ですからね(笑)。
僕が大学卒業して初めにやったのがCM音楽で、言い方は悪いのですが、使い捨て音楽です。
短期間ぱっと流れて、CDも僕の名前も出ないで消えていく。
でも、商業音楽ってそういうものだと思います。
そう思っても手抜きずに一生懸命やりますが、その曲が将来、何十年、何百年も残っていくだろうと思って作っていません。
クラシック音楽と違い、音楽を通して自分自身を表現しようとは思っていません。
消えていっていい、と思っています。

田中 音楽を通して自分を表現できているところもあるんじゃないですか。
これぞ佐藤の音楽!というか…。

佐藤 僕はそこで自分を表現しているとは思ってないですね。
映像に寄り添うのが絶対ですけど、それ以外にその作品に一番合う音楽を見つけること、その作品を撮っている監督が何を求めているのかを考えて書いています。
映像のタイプによって、この映画、ドラマ、アニメには、こういう音楽が合うだろうから、と思って書いています。
僕が心からこのスタイルが好きだから書いているわけでもないんです。
映像の音楽というのは、演出の一部なんです。効果音と同じように。 その作品を少しでも面白く観てもらうための演出の一つでしかなく、その作品のために曲を書く、それ以外の何物でもないと思っています。

佐藤 直紀 / Naoki Sato

1970年、千葉県生まれ。東京音楽大学作曲科映画・放送音楽コース卒業。

在学中から映画、ドラマ、CM、イベント等、様々な音楽分野で幅広く活躍を続けている。

■ドラマ音楽では《GOOD LUCK!!》《海猿》《ハゲタカ》《龍馬伝》《コード・ブルー - ドクターヘリ緊急救命》《カーネーション》《精霊の守り人》

■映画音楽は《チーム・バチスタの栄光》《岳》《永遠の0》《本能寺ホテル》

■アニメでは《プリキュア》シリーズなどが知られる。

2006年に「ALWAYS 三丁目の夕日」の音楽が日本アカデミー賞の最優秀音楽賞を受賞している。