老舗酒店が炭火焼きなど総菜販売 日本酒の消費拡大へ一手

この記事をシェア

  • LINE
福井 2023.05.25 19:15

日本酒の消費量の減少が進む中、福井市内の老舗酒店が新たな取り組みをスタートさせた。コロナ禍で定着した「家飲み」を充実させようと、テークアウトコーナーを設け、料理と合う日本酒の魅力をアピールしている。(5月25日)


創業100年以上の歴史を持つ福井市の「酒乃店はやし」では、厳選した全国の蔵元の日本酒などとともに、店の一角で炭火で香ばしく焼き上げた肉やウナギなど総菜も販売している。目的について、酒類販売部の森下真美子さんは「若い方の日本酒離れが進んでいるので、おいしい酒を知ってもらいたい。食事と合わせるともっとおいしくなるところを目指している」と話す。

日本の食生活にマッチする日本酒だが、人口減少や食生活の多様化で、県内での販売量は10年前と比べて2割あまり減っているそうで、危機感を感じた店は料理人とタッグを組んで、食という価値をプラスアルファした飲み方の提案を始めた。

調理場で腕を振るうのは、ミシュラン「三つ星」の京都の老舗料亭などで10年にわたって修業を積んだ小浜市出身の友本尚兵さんで、試食会では自ら料理の特徴を説明し、店頭で酒を販売する担当者に料理の味と酒との相性をイメージしてもらった。

料理は串焼きをはじめ、鯖と新玉ねぎの南蛮漬けや郷土料理の麩のからしあえなどの総菜、それに冷凍の食材など合わせておよそ30品を販売する予定で、友本さんは「福井県は酒も食材もそうだが、包丁や器だったり、食に関するものがあふれている。職人を含め、輪となって福井を盛り上げていけるような形ができたら」と意気込んでいる。

新型コロナの規制緩和で日常生活が戻りつつある中、「家飲み」の需要を取り込み、料理を通して日本酒の魅力を伝える。地酒をはじめとした日本酒の消費拡大に向けた挑戦が始まっている。