福井県下小学校児童および中学校生徒を対象とした第65回福井県小中学校図画作文コンクール
審査総評

今年で65回目を迎えた伝統ある本コンクールに、県内の学校から、前回を大きく上回る9,000点を超える応募がありました。参加された児童・生徒の皆さんや、指導された先生方の熱心な取組に、心から感謝いたします。
審査会では、作品から伝わってくる子どもたちの思いを感じ取りながら、一点一点慎重に審査いたしました。金賞受賞作品を中心に、審査員の講評を取りまとめ、総評を述べます。
低学年の作品 色づかいが明るく見ている私たちも元気をもらったりほっこりした気持ちになったりする作品ばかりでした。
1年生の作品は、画面いっぱいに大きく豆の木を描き、それを一気に滑り降りようとしているジャックを描いた作品です。目を引くのは、植物の緑とその世界を表す黄色の背景の対比です。とても鮮やかで、ぐんぐん元気に成長していく植物の様子が伝わってきます。
2年生の作品は、いちご狩りの情景を描いている作品です。家族でイチゴを摘んで味わっている様子が表現されています。今まさに口に運んでおいしそうに食べている人もいて、いちご狩りを楽しんでいることがよく伝わります。奥行きを感じさせる構図も素晴らしいです。
中学年では、決まったテーマについて「自分ならどう考えるか」「どう感じるか」や「この景色の何を伝えたいか」など、自分の思いと向き合っている様子が見て取れました。
3年生の作品は、大きな筆で墨を使って描いた線が道となり、そこから物語が始まっている作品です。この世界の住人が生き生きと生活している様子が画面の隅々まで描きこまれていて、描いた本人もワクワクが止まらなかったのではないでしょうか。
4年生の作品は、波しぶきを起こすかのようにバットを振っている様子が表現されています。バットに当たる波が、ボールのように次々と向かってきているようで、とても面白い表現だと思います。波や風の動きが線や点で丁寧に表現されていて、色づかいにも工夫が見られます。
高学年になると、時間をかけてじっくりと描く作品が増えてきました。奥行きや影までも表現しようと、構図や色の組合せを工夫している作品が多くありました。地元の良さを表現した作品がいくつも見られました。
5年生の作品は、ジップラインを楽しむ様子を通して、大自然の雄大さまでが表現されています。体に感じる日差しや風の音までが、見ている私たちにも伝わってきそうです。木々や遠くの山々を少ない色づかいでありながら丁寧に描き、立体感や奥行きをうまく表現しています。
6年生の作品は、地域の伝統的な文化の継承をテーマにした作品です。クワ踊りをしている人物のこちらを見る視線には自信が感じられ、地元を愛していることが伝わってきます。絵を描くことを通して故郷の良さを見つける機会となったのでないでしょうか。
中学生になると、明確な主題をもち、表し方を深く考え、工夫して描いている作品が多くありました。心の内面や空気感までも表現しようとしている作品もあり、表現力の高さを感じます。
1年生の作品は、雪に覆われた地域の情景を描いた作品です。つかの間の晴れ間に、子どもたちが雪だるまを作ったり、犬と共に散歩をしたり、銀世界を楽しんでいる様子が描かれています。雪や空を巧みな色づかいと筆のタッチで表し、気温は低いのでしょうが、見ていると温かい気持ちになる作品です。
2年生の作品は、空想的なテーマで鳥を描いています。絵の具や色鉛筆を駆使し、様々な質感を表そうとしています。コラージュの技法も用いており、構図に工夫が見られます。見るものを様々な想像の世界に引き込む魅力的な作品です。
3年生の作品も、1年生の金賞作品と同じく、冬の北国の生活を切り取った作品です。そり遊びをしたり、かまくらを作ったりして雪を楽しんでいます。そりを引いた跡がかまくらを囲むように描かれ、画面に奥行きと動きを感じさせます。雪の結晶を画面上に表現することで、幻想的な雰囲気も感じます。
図画工作・美術教育では、子どもたち自身が表したいことを見つけ、その思いに合わせて工夫して表現することを大切にしています。入賞した作品からは、どれも子どもの表したい思いと工夫した表し方を見取ることができました。同じテーマで描いた作品であっても、一つとして同じものにはなりません。子どもたちは、絵を描くという行為を通して、多くの力を身に付けていきます。発想や構想をする力、想像する力、考える力、試行錯誤する力、工夫して表現する力、失敗を乗り越える力など、これからの社会で活躍する子どもたちにとって必要不可欠な力ばかりです。
子どもたちが思いをもって表現した絵は、子ども自身そのものです。日常生活の中で感じた驚き、喜びを表現した作品は、見ているだけワクワクします。心の奥を見つめ直して表した作品は、こちらもじっくり向き合いたいという気持ちになります。ご家族の皆様、お子さんの絵について、どんな思いで描いたのか、話してもらってください。その話に共感するだけで、お子さんのことを大切に受け止めているメッセージになります。そして、自分の感じ方や表現を大切にされた経験が、自分とは違う他者の感じ方や表現を同じように大切だと感じられる心の育成につながっていくでしょう。
最後になりましたが、子どもたちの生き生きとした造形活動を温かく見守っていただいているご家族の方々、そして長年にわたって福井県の図画工作・美術教育の向上にご尽力くださっている関係者の方々に、心より御礼申し上げ、総評といたします。

はじめに
第六十五回福井県小中学校図画作文コンクール「作文の部」には、817点の応募がありました。みなさんの作品を審査員の先生方とともに読ませていただき、金・銀・銅と佳作の各賞を決定しました。審査に当たり、どのような点を評価したのかを講評します。
2 小学校の作品について
小学校の応募作品は、身近な生活体験の中から発見したことを自分の言葉で率直に表現している作品が多くありました。また、総合的な学習の時間での学びから得た、ふるさとの良さ、ふるさとへの誇り、ふるさとの文化を大切にしていこうとする強い思いが伝わってきました。どの作品も自分の思いが素直に綴られており、特に入賞作品では、自分が体験したことを社会問題と結びつけて考えたり、自分の失敗の経験を逆に明るく語ったりするなど、すばらしい感性や書きぶりに感動しました。
【金賞】
「竹とんぼ」
(三室小学校 一年 いとう ちず)
地域のおまつりでしょうか。くじ引きをしてもらった「竹とんぼ」。その「竹とんぼ」に作者はとても愛着をもったのでしょう。家に帰ってお父さんに教わりながら何度も「竹とんぼ」を飛ばす練習をします。そして、とうとう「竹とんぼ」が飛んでいったときの喜んでいる様子が読み手の目に浮かぶように書かれていました。日常の出来事を、率直に、自分らしく生き生きと表現しているところがすばらしく感心しました。
「もしも、ズートピアのせかいに行けたら」
(高椋小学校 二年 東 ほ音花)
「しん切+ありがとう=え顔」
(高椋小学校 三年 よし田 ゆいな)
いつも作者の帰りを待ってくれる祖母の優しさや電車で席を譲ってもらった経験を通して、親切を受けたり、人に優しくしたりしたときに「うれしくなるのはどうしてなのか」と考えました。そこで気付いたのが、題名の「しん切+ありがとう=え顔」の法則です。親切にされて「うれしかった」だけで終わらず、物事の本質についてじっくり考える姿勢が素敵です。「親切」を通して、いろいろな人に支えられていることに気付き、感謝の気持ちやもっと人に親切にしたいという気持ちがよく伝わってきました。
「ゼツボウ日記」
(大安寺小学校 四年 村上 紗也香)
「ゼツボウ日記」という題名を見ると、どのような暗い話だろうと想像します。作者は失敗をする度に、「私は毎日ゼツボウしてばかり」と嘆きます。一方で、その失敗を「自分ですら笑えました。」と前向きに捉えます。暗いばかりではなく、失敗を肯定的に描くユニークさがある作品でした。やる気が失せるくらいの草むしりも、家族に喜んでもらえたことから、ためになるゼツボウもあると気付きます。頑張って作文を書け上げたけれど、「先生に『最後の行まで書いたら。』と言われゼツボウしました。」と最後のオチまであり、文章構成の巧みさに感心しました。
「大切なお米について」
(安居小学校 五年 橘 満弥)
生活に欠かせないお米について、体験したり、調べたりする活動を通して、見方が変わり、一層の愛着をもつようになったことが、生き生きと書かれています。手植えで田植えをしたり、鎌で稲を刈り取ったりする体験を通して、昔の農家の人たちの苦労を身にしみて感じています。さらに、お米は多くの人の努力と自然の力によって、食卓に並んでいることを実感しています。自分の体験からお米を食べることのありがたさを訴える文章は、読み手に大きな説得力を与えます。
「修学旅行での成長」
(成器南小学校 六年 太田 花)
小学校生活の一大イベントである修学旅行を通して、自分の興味が広がったり、これまで気付かなかったものの価値に改めて気付いたりします。清水寺で外国人とのコミュニケーションを通して得た英語への興味や英語を学ぶことへの意欲。また、大阪万博で体験した異文化に対する興味と感動。そして、仲間と一緒に過ごした時間。それらを「成長の証」と表現し、自分を成長させてくれたものとする作者の思いが十分に伝わってきました。心の成長を軽やかに書き綴った作品です。
2 中学校の作品について
中学校の応募作品は、日頃の学校生活を通して気づいたり考えたりしたこと、中でも部活動や学校行事を題材とした作品が多く見られました。そのほか、家族や友達への思い、社会問題について等、幅広い題材で、自らの体験を経て学び取ったことが綴られ、自分の弱さや迷いと誠実に向き合い、それを成長の糧へと変えていく姿が描かれていました。中学生ならではの柔軟な発想、自己理解の深まり、学びを広げる力強い探究心からは未来への希望が窺えます。それぞれに、等身大の悩みとそこから生まれる成長の瞬間が息づき、若い感性の瑞々しさと可能性を強く感じさせるものでした。
【金賞】
「僕にとっての科学」
(北陸中学校 1年 福田将大)
リチウムイオン電池への関心から出発した作者の「科学」への興味が、様々な出逢いやつながりを経て壮大な夢へと広がっていく過程が、的確に内容を伝える整った文体で描かれています。文章に圧倒的な説得力を与えているのは、20分野もの講座の受講をはじめとする、作者の貪欲な探究心と行動力。試行錯誤と忍耐の上にたどり着く科学の可能性に強く惹かれ、知れば知るほどその魅力を再認識していった作者が、「将来は、僕自分の『科学』をさらに広げ、誰かの役に立つ新しい技術を生み出せるような研究者になりたい」という夢を確かなものにした作品です。
「大きな壁」
(清水中学校 2年 林 愛里)
夏休みの宿題という「大きな壁」に向かって「小さな先延ばし」を繰り返し、追い込まれていく自分の姿を淡々と時に軽妙に語っています。自分を壊れ物として扱い、嘆くでもなく、そもそも論に逃げこむでもなく、潔く腹をくくって未達成のワークやプリントに立ち向かう自分が描かれます。そこにあるのは未成熟な自分をごまかさずにさらけだして向き合う心の余裕です。その心の余裕に自身の成長戦略を見いだしているのです。健全な自己像を描く一助として、同世代の中学生に是非読んでもらいたい作品です。
「三日坊主の才能」
(北陸中学校 3年 赤井 芹奈)
自分の短所だと思い込んでいた「三日坊主」を、他者の言葉を契機に新しい価値として捉え直す過程が丁寧に描かれています。冒頭、部屋に残る「遺品」の描写は具体的で、中学生らしい等身大の悩みが伝わります。続く、従姉妹の一言によって視点が大きく変わる場面は説得力があり、読んでいて心が軽くなりました。「三日坊主は未知の世界へ飛び込む才能」という発想は独自性があり、自己理解の深まりが見られ、最後の「三日間の挑戦」という未来への期待を込めた表現は明るく前向きです。自分の弱点を肯定的に捉え直す姿勢が、成長期の瑞々しい感性として光る作品です。
3 おわりに
AI技術で文章を作成できる時代になり、「作文を書く意味とは何か。」を問い直すこともあるでしょう。
作文を書くということは単に伝えたいことを整理して書く活動ではありません。経験を振り返り、考えをたどり、言葉にすることで自分自身の思考を深めていくものでもあります。
整った文章や、表現力のある文章はAI技術も生み出すことができるようです。しかし、迷いながら考えたり、経験を振り返ったりしながら自分なりの考えにたどり着こうとする過程は、「あなた」にしか書けません。AI技術は、「迷う」「立ち止まる」「考えが揺れる」「考えが変化する」といったことは苦手だそうです。AI時代に「作文を書く意味とは何か。」それは、「あなた」にしかできない、「あなた」しか知らない「考えの跡を書く」ということにあります。
「考えの跡を書く」ことは、対話を生み出します。
過去の自分、将来の自分、今の自分との対話。
また、「あなた」の考えの跡を届ける読み手との対話。
この「対話」が生む、共感、違和感、安心感、高揚感……は、子どもたちのもっと書きたい。伝えたい。という深い学びにつながっていくのでしょう。ここに大きな価値をみることができます。
私たち審査員は、すべての作文を通して「あなた」たちとの対話を楽しみ、また、一つ一つの作品に返事をするような気持ちで読み進めました。審査においては、表現の巧みさはもちろんのことですが、書き手がそれぞれのテーマとどのように向き合い、どのように深め、感じているかという「考えの跡」を重視しました。入賞した作文はどれも、その人にしか書けない素敵なものです。それは、他の人にはできない珍しい経験をしているということではありません。「あなた」なりの考えがそこにあり、それは魅力的であり、そして読み手に自然と伝わり、しっかりと作品全体を支えているということです。
最後になりましたが、ご指導された先生方等におかれましては、すべての作文から日頃の丁寧な取り組みが手にとるように感じられ、感銘を受けているところです。今後も、子どもたちが「自分なりの考え」を言葉によって表現できるようにご指導、ご支援くださいますようお願い申し上げます。
また、本コンクールが子どもたちにとって、貴重な学びの機会となっていることに対し、関係された皆様に心より厚くお礼申しあげ、総評といたします。

